傷を共有することは、最高の癒しです


以前、こんな記事を書いたことがあります。

 

セラピストは、Blank Slateであるべきか

 

欧米で始まった心理療法は、
もともとは、ものすごく 冷たい感じがするものでした。

 

現代心理学の祖であるフロイトが生み出した精神分析は、
クライアントを長椅子に横たわらせ、
セラピストはその後ろに座り、
(つまり、クライアントはセラピストを見ることすらできない)
クライアントに、頭に浮かぶいろいろなことを、ひたすら言葉にさせ、
セラピストはその言葉に、無機質にときどき相槌を打ったり、
突き放したような解釈を述べるという技法です。

 

米国の大学院の授業で、
このフロイト流の精神分析を
学生同士でペアになって、
実際にやってみるワークを行ったことがあるのですが、
みな、ワークの終わりに
「くそったれ!」と叫んでました(笑)。

 

そこには、
癒しには不可欠である共感も、
温かみもまったくないので、
当然の反応です。

 

(残念ながら、
精神分析という技法は
特に日本では
いまだに市民権を得ているので
わたしのもとには、
長年精神分析を受けて
ボロボロに傷ついたクライアントさんも
たまにいらっしゃいます。
はっきり言ってしまいますが、
クラシックな精神分析は、
本当の癒しのためには、
百害あって一利なしです)

 

精神分析にそのルーツを持つ
心理療法の現場では、
長年にわたり、
「セラピストは自己開示をしてはいけない」というのが
お約束になっていました。

 

「セラピストが自分について語ることは
クライアントの癒しのプロセスを妨げることになる」
という理屈からです。

 

でもわたしは、
冒頭のブログに書いたように
その意見には与しません。

 

これまでにわたしが行ってきた
1万件近いセッションの経験から、
セラピストが、
自己を隠さず
素の自分自身でいることは
時として、
クライアントに
大きな癒しと、
変容をもたらすことを
知っているからです。

 

つい先日も、
あるクライアントさんとのセッション中、
わたしがこれまで
自分のセラピーでしか話したことがない
幼少期のあるエピソードが
繰り返し頭に蘇ってくるので、
これはこの話を共有しろというお告げだと思い、
最後に
それを思い切って
クライアントさんに話してみたところ、
とても大きな変容が起きました。

 

クライアントさん曰く、
「身体のあちこちに
光がともった感じがした」
そうです。

 

なぜそういう癒しが起きるのか。

 

それこそが、
わたしが癒しに不可欠だと考えている
vulnerabilityの体現だからです。

 

(わたしは、vulnerabilityを
「自分の傷を認め、それをオープンにすること」と 訳しています。
vulnerabilityについては、ぜひこちらの記事もお読みください)

 

わたしは以前から、
そのクライアントさんの目には、
セラピストであるわたしは、
もうとっくに自己の癒しを完結した、
キラキラした、
すごくパワフルな存在に
映っているのではないかと感じていました。

 

でも、
もちろん、
そんなことはない。

 

わたしだって、
今でも傷つくし、
子ども時代のつらい記憶が蘇って
古傷が疼くことだって、
いくらでもあります。

 

ゆえに、
自分の過去のトラウマ体験を
共有することで
彼女には、
わたしも、
彼女となにひとつ変わることがない
ふつうの人間だということが
身体感覚としてわかったのだと思います。

 

だから、
自助グループというものは
あれほどパワフルなのですよね。

 

傷を共有するのは、
傷を舐め合うこととは
まったく違います。

 

自分の過去の傷を隠さず
似たような体験をした他の人たちと
分かち合うことでしか
起きない癒しがあると、
わたしは確信しています。

 

(かつて一世を風靡した
デービッド・ホーキング博士の
「パワーか、フォースか」にも、
自助グループは、
愛と同レベルの、
かなり高いエネルギーの水準であることが 書かれています )

 

ということで、今回は、
わたしが先日クライアントさんに話した
小学2年生の時に
クラスメイトたちから受けたある仕打ちについて
(その体験は、
わたしの自己肯定感を
根こそぎ奪うものでした)
こちらでも書こうと思ったのですが、
前置きだけですごく長くなってしまったので(笑)、
またの機会に譲ります。

 

その体験を世界と分かち合うことで、
誰かの世界に光がともり、
わたし自身も
今よりももっと癒されるということが
分かっているのでね。


この写真、とても素敵なメタファー。
傷ついた枯葉じゃなければ、光を通すことはできませんよね。

 

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