今回の旅のハイライトは、何と言ってもこれでした。
この日に米国にいるために、私はキャンセル料3万円を払って帰りのフライトを変更したのですが、本当にその甲斐がありました。間違いなく歴史に残る、素晴らしい日でした。その瞬間に立ち会えたことを心から幸せに思います。年取ってから若い者たちに自慢するのが楽しみです(笑)。
私がなぜ、彼の大統領就任にそんなに思い入れがあるのかというと、クリントンからブッシュに政権が変わる時期にアメリカにいて、福祉関係の予算がどんどん削られていくのを目の当たりにしたというのももちろんあるのですが、やはり何と言ってもサンフランシスコの隣町オークランドでホームレスの子どもたちと働いていた体験が大きいと思います。ちいさな黒人のホームレスの女の子と日々接して、彼ら黒人がこの国で受けてきた差別を肌身に感じていた私には、彼女たちにそっくりのオバマの2人の娘がホワイトハウスに住むことになるなんて、本当に、涙なしでは見られません。
大統領就任式の日は、大画面のスクリーンから町の小さなレストランのテレビや誰かの家のガレージの特設スクリーンまで、街のあらゆるところであらゆる形態のテレビ中継鑑賞パーティーが開かれることになっていましたが、私はこの日は絶対に、黒人人口が多いオークランドで人々と一緒に大統領就任式の瞬間を過ごすと心に決めていました。オークランド在住の私の大切な友人であるハコミセラピスト、小山シーナにアレンジしてもらって、彼女の家族や友人と共に朝早く眠い目をこすりながら向かったのがここです。
普段はバスケットボールの試合やコンサートに使われる大きな会場、オラクルアリーナ。
早朝だというのに続々と人が集まってきました。そのほとんどがアフリカ系アメリカ人です。先生に引率された子どもの集団も目立ちました。アメリカというのは冷酷なほど人種の境界がはっきりしている社会で、オークランドのインナーシティの小学校にはアフリカ系やアジア系の子どもたちばかりで白人の子はほとんどいません。この日会った子どもの集団もほぼ100%有色人種でした。
この日ここに集まったのは、翌日の報道によると約1万人。観衆と一緒に中央の4面スクリーンに映し出されたCNNの中継を見守りました。オバマやミシェル夫人の姿が少しでも映ると歓声と拍手がわきおこり、ブッシュが映ると大ブーイング。
そして、オバマが大統領の宣誓をし終わった瞬間の映像がこちらです。
皆総立ちで大歓声、拍手の嵐。本当に感動的でした。生きてて良かった~。
会場ではオバマTシャツやステッカー、バッジがたくさん売られていて、私たちもこの通り。
ちょっとやりすぎでしょうか(笑)。
この晩はあちこちで開かれるパーティーのひとつに参加するつもりでしたが、さすがに早朝から動いていて疲れたので家でテレビを見て過ごしました。ダンスパーティーのひとつで、ビヨンセの歌にあわせてオバマ夫妻がファーストダンスを踊る姿を見たときには思わずうるうるしてしまいました。
しかし、じっくりテレビを見て思ったのですが、彼のカリスマ性は本当にすごい。どの角度から撮っても絵になるし、シーナのだんなさんのエリック曰く、「彼は今、地球上でもっとも愛されている人間だ。ほとんどイエス・キリストみたいだな」。ここベイエリアからも、本当に多くの人がこの瞬間に立ち会うためにワシントンDCに向かいました。当日の観衆は100万人を超えたといいます。皆がそれだけ、8年間の暗黒時代の後で彼に期待しているのがひしひしと分かります。
翌日の新聞各紙(SFクロニクル、NYタイムズ、ウォールストリートジャーナル)です。
さまざまな黒人たちのコメントが載っていて、読むだけで泣けてきました。「これまでは子どもたちに、なりたいものに何でもなれると話すとき、どこかで嘘をついているような後ろめたさがあった。これでその言葉が本当になる」。彼らはどれほどこの日を待ち望んでいたことでしょう。
空港では、こんなものも売っていました。
オバマ・ペパーミント。噂によると他にもオバマビールやオバマケーキなどオバマ・グッズは数限りなくあるようです。大統領就任セールをやっているお店もあるとか。いろいろな学校でも子どもを講堂に集めたりして就任式の中継をテレビ鑑賞したようですし、すべてが本当に前代未聞の出来事でした。誰が8年前のブッシュの就任式に子どもたちを集めてテレビ観賞しようと考えたでしょうか(笑)。
彼が人々の期待を裏切らない素晴らしい大統領になってくれることを心から祈ります。