私はスクールカウンセラーもしているのですが、
「将来、何になりたいか分からない」「自分が何が好きか分からない」という中高生に結構会います。
もともと私たちは、生きる意欲の塊として生まれてきますが、成長の過程でその意欲が削がれていくのも、今の社会の現状ではやむを得ないような気がします。
やりたいことだらけの小さな子どもは、私の娘も含め、まあいろんなことをやらかしてくれるわけですが、大抵の場合、子どもが夢中になってやることは、親にとってはやって欲しくないことなわけです(笑)。
(うちの娘もつい先日、居間のちゃぶ台を油性マジックで落書きだらけにしてくれました。消すのにものすごく時間がかかりました・・・涙)
「子どもには、ダメという言葉は使ってはいけません」と、よく育児書などには書いてありますが、・・・聖人君子でもない限り、無理です。私も、自分の調子がいいときは余裕を持って見ていられますが、仕事で疲れて帰ってきた時など、やはり目を吊り上げて怒ってしまうこともしばしば。
・・・・ということで、程度の差はあれ、子どもたちはごくナチュラルに、「あれやるな、これやるな」と幼い頃から制限をかけられつつ育ちます。(ま、中には命にかかわることもあるので、仕方ないんですけどね)
そして、ある程度大きくなると、今度は大人たちから逆に「あれやれ、これやれ」攻撃が始まります。勉強しろ。宿題やれ。手を洗え。返事は大きな声で。挨拶は元気よく。よく噛んで食べろ。・・などなど。
そして、そこにはもちろん、引き続き、「あれやるな、これやるな」もたくさんあります。廊下を走るな。授業中立ち歩くな。勝手にトイレに行くな。放課後ほっつき歩くな。休みの日に子どもだけで繁華街へ行くな。・・・。
こういう風に、常に指示や制限を受けながら育てば、もともと自分たちの中にあった「あれしたい」「これが好き」という感覚が鈍ってしまった子ども(そして、そのまま成長した大人)だらけになってしまったとしても、全く不思議ではありません。
(逆に言うと、これほど制限をかけられて育っているのに、それでもちゃんとやりたいこと、好きなことがある人がこれだけいることの方がすごいと思います。私そこに、人間の底力を感じます 笑)
自分がやりたいこと、好きなことが分からないまま大人になった人々に、「生きがいを見つけなさい」「好きなことをやって、生き生き暮らしなさい」と言っても、言われた方は戸惑うばかりです。だって、自分が好き、心地よいと感じるセンサーが、すっかり錆びついちゃっているわけですから。
でも、自分が何が好きで心地よいかが分からないで生きていくのは、当たり前ですが、とても苦しいです。
自分の心地良さを取り戻して行く作業は、幸せに生きるために必要不可欠なのです。
そしてそれは、必ずできます。あるステップさえ、おろそかにしなければね。
それは・・・。
・・・・・。
「まず、自分が何が嫌いで、何をイヤだと感じるかがわかるようになる」ことです。
・・・これ、本当に本当に本当に大切です。
大抵の人は、このステップをおろそかにするから上手く行きません。
頭で、「自分はこれが好きだ」「あれがやりたい」と勘違いして、
いろいろなことにトライしてみるものの、実際にやってみたら本当はそれほど好きじゃなかった・・・ということを繰り返している人、私の周りにも結構います。
本当の「好き」「嫌い」は、頭の中からではなく、身体から湧き上がってくるものです。
その身体感覚を取り戻すには、まず、自分が何を不快だと感じるかのセンサーを取り戻す必要があります。
動き回りたいのにじっと座っている。本当はトイレに行きたいのに我慢する。しゃべりたいのに黙っている。本当はやりたくないのに無理やりやらされる。
・・・こういう体験を積み重ねていくと、(日本で学校教育を受けている以上、ほとんどの人はそうですが)イヤなことをいちいち「嫌だ」と感じられなくなっていきます。
当たり前です。だって、感じていたら苦しいから。苦しいくらいなら、感じない方がマシだから。
(嫌なことをきっぱり「嫌だ」と拒絶して学校に行かない子どもたちは、飼いならされること、感覚を麻痺させることを拒絶しているすごい人たちなのかもしれません)
そのまま「嫌だ」というセンサーを錆びつかせたまま大人になると、本当は好きじゃない仕事を続ける本当は好きじゃないパートナーと一緒にいる本当はいたくない場所に居続ける・・・等々のことが、できてしまいます。
そうやって、「本当はやりたくない」ことに気づかないでいるうちは、「やりたいこと」が見つからなくても当たり前なんですよね。
嫌いなことが嫌いって分かるって、実はすごいことなんです。
好きなことが見つからない人は、まずは、自分が嫌いなことが何かに気づいてください。そしてそれを、少しずつやめてみてください。
嫌いなことをやめたり、嫌いな人から離れてみると、自分の身体が、すごくほっとすることに気づくと思います。
その感覚が出てくることが、自分の「好き」につながる第一歩になりますよ。
これは1年くらい前の写真。・・というか、娘の手の届くところに今も油性マジックを置いてしまう親の学習能力が低すぎる(笑)。