「若いときの苦労は、買ってでもせよ」
この格言、
あなたもきっと、
聞いたことがありますよね。
「若い頃の苦労は自分を鍛え、
必ず成長に繋がる。
貴重な経験となって将来役立つものだから、
求めてでもするほうがよい」
という意味です。
何かを成し遂げるためには、
その前に必ず、
歯を食いしばって、
苦労せねばならない。
「巨人の星」の 大リーグボール養成ギプスはもちろんのこと、
(古いな・・・^^;)
寿司職人が、 最初は何年も皿洗いしかやらせてもらえないのも、
テニス部で、 新入部員が球拾いばかりやらされるのも、
みな同じ発想からきています。
でもそれって、
実に昭和的な思考だと思うのですよね。
最近、竹細工を習い始めました。
講師の田崎建さんは、
30代後半で、大分の竹工芸の訓練学校に入り、
2年かかる過程を1年で切り上げて
地元の千葉に戻り、
竹部というコミュニティーを立ち上げ、
いろんな人を巻き込んで、
とても楽しそうに活動しています。
彼によると、
竹細工の世界には、
「ひご取り3年」という言葉があって、
職人見習いは、
最初の3年は、
ひたすら竹ひご作りに励むんだそうです。
その間、
もちろん、
かごを編んだりもしない。
でも田崎さんは、
「かごを編んで初めて、
どんなひごが、かご編みに適しているかが分かるし、
ひご作りがいかに大切かもわかる。
だから多少の失敗ひごでもいいから、
どんどん、かごを編んでください」
と言います。
そして、
「職人技は見て盗め」なんてことも全然なく、
自分が苦労して発見したひご作りや編みのポイントを、
惜しみなく教えてくれます。
youtubeで無料動画もたくさんアップしているので、
彼の動画を見ただけで、
ひご作りからかご編みまで、
独学で全部やってしまったという
猛者もいるくらいです(笑)。
そんな彼の主催する講座だから、
参加者の、
上達ぶりの早いこと。
「ひご取り3年」どころか、
たったの3ヶ月、
月2日ずつの講座を受けただけなのに、
みな、どんどんひご作りがうまくなり、
かごもどんどん編み、
だから余計に竹仕事が楽しくなって、
自主練に励み、
さらにひごの精度が上がる・・・という、
素晴らしい循環が起きています。
「未来食堂」の小林せかいさんも、
食堂開設前、
サイゼリヤから老舗料亭まで、
いろんなところで短期間ずつ修行をして、
老舗の料亭では、
それこそ何ヶ月も下積みさせられるだけみたいな体験をして、
その不条理さを思い知ったそうです。
だから自分のお店では、
飛び込みのまかないさんが戦力になるよう、
店の設計から仕事のマニュアル作りまで、
綿密に行い、
しかも、将来自分でも食堂をやりたいまかないさんには、
自分のノウハウを惜しみなく伝えてくれ、
さらにはその人の開業準備のため、
一緒に飛び回ったりまでしています。
(もう何年も前ですが、
未来食堂で一度まかないをさせてもらったときには、
まず、「何がやりたいですか」と
こちらの希望を聞いてくれて
すごく感動したのを覚えています。
わたしはカフェを開業するわけじゃないので、特に希望はなかったのですが、
こちらの目的になるべく沿ってサポートしてくれようとする
せかいさんの姿勢は
終始一貫していました)
田崎さんやせかいさんとは正反対の体験も
もちろん、したことがあります。
現在8歳の娘は、
北海道にいたころ、
札幌近郊の
ある保育園に通っていました。
海も山もある環境で
外遊びを思い切りさせてくれ、
食育でも評判だったので、
わざわざ家から遠いその保育園に
4年も通わせたのです。
で、この保育園、
保育環境は評判通り素晴らしかったのですが、
いかんせん、
価値観が、むちゃくちゃ昭和でした。
子どもの年齢ごとの発達課題は、
保育園側が決め、
(つまり、子どもの多様性は無視)
特定の年齢になるまでは、
いろんなことをやらせない。
(箸で食べる前に十分手づかみ食べをさせた方がいいから、
子どもが箸を使いたがっても与えない、
遠足で動物園に行ったときの感動を体験させたいから、
その前に家族で動物園には行かないなど)
で、
何かの課題を与えたときは、それを、
「頑張って、チャレンジを乗り越えて身につける」
という姿勢が、
称賛されていました。
つまり、
軽々と何かができるようになることは、
全然評価されない。
わたしの娘は、
その保育園が理想とする子ども像からは
ずいぶんかけ離れていました。
外でどろんこになって遊ぶのをよしとされている保育園で、
彼女は小さいときから
おしゃれが大好きで、
超インドア派(笑)。
その保育園はなぜか、
「髪の毛を結ぶと頭の血流が悪くなる」という
よくわからない理由で、
女子でも短髪が不文律になっていましたが、
うちの子はとにかく、
ごく幼い頃から、
ヘアスタイルに対する執着も、
半端なかった。
2歳のときに洗面所から泣き声が聞こえたので、
何事かと飛んでいったら、
鏡の前で、
「髪の毛がうまく結べない」と言って、
号泣していたほどです(笑)。
だから彼女は
ものごころついた時から
三つ編みに、
ものすごい情熱を傾けていました。
3歳の時には、
椅子の足に、 麻紐を3本結べと言われたので
その通りにしたら、
その紐を使って、
毎日、
黙々と三つ編みの自主練をしていました(笑)。
そんな娘だったので、
短い髪の一部を、
自分で工夫して三つ編みにすることなぞ、
お手のもの。
(そして、髪の長いわたしの友人たちは、
会うと即座に、
彼女の練習台にさせられていました 笑)
その保育園は、
年長の課題として、
「縄編み」がありました。
縦に長く裂いた布を、
足の親指にひっかけながら、
三つ編みにして、
マイなわとびを作るというものです。
これは保育園生活のひとつのハイライトで、
何日かかってもできない子どもが
泣きながら縄を編み続け、
ようやく全員が完成したら、
みんなでそれを大喜びして、
ホッキカレーでお祝いするというのが、
大切な行事になっていました。
・・・で、
うちの娘。
三つ編みなど、
3歳から自主練済みなので、
縄編み初日に、
誰よりも早く、
さっさと長い縄跳びを
完成させてしまいました。
わたしがいろんなママ友から集めた情報によると、
その時、
娘は保育士から、
「お母さんに三つ編み教わったのかい?」と聞かれただけで、
完成を喜んでもらうことも、
もちろん褒めてもらうことも、
なかったそうです。
そのせいか、
せっかく縄編みを一番に完成させたその日、
帰りの車中で、
娘はものすごく荒れていました。
彼女が縄編みをあっという間に完成させたのは、
大好きな三つ編みを、
何年も前から
自主的に練習していたからです。
でもそんなこと、
保育園はまったく省みなかった。
「保育時間内で 苦労して何かを身につけ、
その達成感を味わわせる」という
底の浅い価値観に
合わなかったというだけで、
(だから事前の自主練などもってのほか)
完成を喜んでもらえないばかりか、
暗に批判された。
わたしはこの件では、
いまだにあの園に
激しい憤りを感じています。
(他にもいろいろあり、
結局、卒園4ヶ月前に、
転園させることになるのですが・・・・)
せかいさんのように、
本人がやりたいことを
思う存分サポートしてやらせてもらえるのと、
相手が勝手に決めた価値観で
やりたくもない苦労をさせられるのでは、
一体どちらが、
その人の幸せに貢献する態度でしょうか?
答えは言うまでもありません。
だから私は、
「苦労は買ってでもせよ」
などという価値観は、
今すぐゴミ箱に捨てちゃっていいと思います。
自分が苦手で
好きでもないものを、
苦労して身につけたところで、
それが必要なくなれば
あっさり忘れちゃうのが関の山です。
(代表例:受験勉強)
代わりにわたしは、
「好きこそものの上手なれ」 という格言を、
推奨したいと思います。
好きなことを身につけるには、
もちろん「努力」は必要になったとしても、
それは「苦労」とは違いますよね。
だって、
それが大好きだからやってるんですから。
苦手なこと、嫌いなことを
敢えて克服しようと頑張るよりは、
自分が好きなこと、楽しいことを
寝食忘れてやったほうが
よほどいいです。
自己肯定感を上げるためには、
「苦手を頑張って克服し、
人並みにできるようになる」よりも、
「大好きなことに没頭し、
それを磨いて、
その分野で突出した存在になる」方が、
ずっといいに決まってますから。
(たとえ突出した存在にならなかったとしても、
楽しいことをやっているだけで、
生きる活力は、何倍にもなります)
だからあなたも、
売られた苦労は、
決して買わないようにしましょう。
そうではなく、
自分が心から好きなもの、
楽しめることを見つけて、
それを思う存分、
試行錯誤しながら、
楽しんでください。
大好きなことに、
寝食を忘れて打ち込む。
それが畑仕事であれ、
手仕事であれ、
音楽であれ、
そうして身につけた技術は、
あなたの生活を、
物理的にも精神的にも、
必ず豊かにしてくれるはずですよ。
この春、娘連れであるトレーニングに参加したとき、
講師の髪を早速編み込みさせてもらっていた娘。
そのせいか、
あっという間に先生と仲良くなってましたo(^▽^)o。
(つくづく、うらやましい性格・・・・)
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