立春の日である本日、初の単著「本気でトラウマを解消したいあなたへ」が発売になりました。
（Kindle版も同時発売です）
ウェブマガジン「コ２」で１年間かけて行った連載を加筆修正し、さらに１年かけて丁寧に本にしました。
帯の「地味だけど確実に楽になる方法」という言葉がすべてを物語っています。
薬のように、束の間だけ楽になるのではなく、時間がかかっても確実に元気になりたい方には、必ずお役に立てるはずです。
発売を記念して、本の前書きを全文こちらで公開したいと思います（大サービスo(^▽^)o）。
よろしければぜひお読みください。
トラウマで苦しんでいる方へ～あなたは本物の英雄です
初めまして。トラウマセラピストの藤原ちえこと申します。
地方にあるちいさなカウンセリングルームで、うつや不安、パニック、不眠など多様な症状に苦しむ方や、人間関係や子育てに悩む方など、さまざまなクライアントさんを相手に日々セラピー（対面と遠隔）を行っています。
これまでにお会いした方は８００人以上、セッション件数は延べ９０００件近くになります。
クライアントさんのほとんどは女性ですが、男性ももちろんいます。
私がこの本を書いた一番の理由は、深刻なトラウマ症状や、誰にも言えない過去の傷を抱えたあなたに、どうしても次の二つのことを伝えたかったからです。
まずは、あなたは決して一人ではないということ。
そして、あなたが一生抱えて生きていかなければならないと思っているかもしれない症状は、解消することが可能だということです。
私の元には、あなたと同じ、本当に重いトラウマ症状を抱えた方がたくさん来ます。
そして、あなたが日々、普通の日常生活を送るために、どれほど血のにじむような努力をしているかを、彼らとのセッションを通じて私はよく知っています。
たとえば、あなたは絶えずものを失くすので、探し物に毎日何時間も費やしているかもしれません。
文章を何度読んでもその内容が頭に入らないので、一本の短い返信メールを書くのに何十分もかかっているのかもしれません。
長年不眠に苦しみ、夜中にしょっちゅう目が覚めたり、毎晩のように悪夢にうなされたりしているかもしれません。
ものすごく嫌な感覚に襲われて、どうしていいか分からずにリストカットしてしまうことがよくあるかもしれません。
思い出したくないほど嫌なことが過去にあって、そんな目に遭った自分のことが恥ずかしくてたまらず、誰といても常に、自分ではない何者かのふりをしているのかもしれません。
身支度に何十分もかかって遅刻しそうになったり、はっと気づいたら数時間経っていたり、自分では全然覚えていない言動を他人から指摘されて（話した覚えがないことを人から「絶対にそう言った」と言われるなど）混乱したりすることも多いかもれません。
ひどいうつで何年も薬を飲んでいたり、毎朝ベッドから起き上がるのに死ぬほど苦しい思いをしたり、常に疲労感があったり、動悸が激しかったりするかもしれません。
常にどこか空しさや寂しさを抱え、時折湧いてくる激しい怒りのやり場がなくて戸惑っているかもしれません。
そして、このような症状を抱えているあなたが、普通の日常生活を送るためにどれほど頑張っているかを、ほとんどの人は知らないのです。
たとえば、オリンピック選手の努力は、誰が見てもよく分かります。
そしてその頑張りがメダルなどの結果に結びつけば、世間はその努力に対する賞賛を惜しみません。
身体に障害がある人の奮闘も、よく見えます。
手足が不自由だったり、目が見えなかったりする人がさまざまなことにチャレンジしながら生きているさまにも、世間は賞賛を送ります。
でも、あなたの頑張りは、誰の目にも見えません。
だってあなたは、ぱっと見、普通に見えるからです。あなたは腕が欠けているわけでも、歩けない訳でも、耳が聴こえないわけでもない。
そんな一見普通のあなたが、遅刻を繰り返したり、頼まれたことを忘れたり、急に調子を崩して約束をキャンセルしたり、激しい感情の起伏に振り回されたりしていたら、周りは眉をひそめこそすれ、その陰にあるあなたの奮闘や努力、身を切るようなつらさは分からないのです。
でも、私には分かります。
あなたが、いつも霞がかかっている頭で一生懸命考えをまとめようとしたり、朝起きるのが死ぬほどつらいのに頑張って寝床から出て家族のために朝食を作ったり、仕事になんか全然行きたくないのに這うようにして通勤したりするのには、オリンピック選手が日々トレーニングを積むのに勝るとも劣らないくらいの多大なエネルギーを必要とすることを。
誰にも評価されず、誰も知らないところで、毎日毎日、消えてしまいたい気持ちと戦いつつ、それでも生きるという選択をしているあなたの血反吐を吐くような努力を、私は知っています。
あなたは、本物の英雄です。
あなたのやっていることは、オリンピックのメダルに値するのです。
そして、そんなあなたでも、必ずもっと楽に生きられるようになることを、私はこの本の中であなたにお伝えしていきたいと思います。
あなたが癒されることは、可能です。
ただ、間違ったセラピーや、普通の精神科に通い続けるだけでは、本当の癒しは起こらないのも事実です。
この本に書かれていることは、一見地味で当たり前のことも多いですが、ここに書かれた癒しの大原則を知り、ここで提案していることに地道に取り組めば、どんな人でも、今より楽になることは可能だと私は確信しています。
現に、私のクライアントさんたちの間では、何年も抗うつ剤を飲み、何年も休職していた人が、薬をやめて職場復帰したり、リストカットをやめられたり、夜眠れるようになったり、悪夢やフラッシュバックや希死念慮（死にたい気持ち）がなくなったりすることは、普通に起こります。
そう、普通に起こるのです。
特別な人たちだけが、たまたま運が良くて癒されたのではありません。
だからこそ、地方にあるほぼ無名の小さなカウンセリングルームを運営している私のところにも、全国から連絡をくださる方がいるのです。
だからあなたにも、希望を捨てて欲しくなくて、私はこの本を書きました。
【本書の構成】
第一部「トラウマのしくみ」では、なぜあなたが今のような症状を抱えて苦しんでいるかの理由を、精神論や発達論的な視点ではなく、自律神経系の働きから説明しました。トラウマを解消するには、なぜ会話だけのカウンセリングや薬物療法のみではダメなのかについて、日本一わかりやすく解説したつもりです。
「真実を知ること」は、癒しには欠かせません。難解な説明ではないので、ぜひ飛ばさずに第一部からお読みください。
第二部「トラウマの実際」では、トラウマを抱えた人が抱える典型的な症状の解説と、代表的なトラウマのカテゴリーをいくつか取り上げました。ここを読めば、なぜ自分がこのような症状を抱えているかが理解できると思います。
トラウマ体験をしたあなたは、「異常な体験に対して正常な反応をしている」に過ぎません。それを理解すると、自分を責めることが減ります。あなたが抱えている症状が、いかに当然の結果であるのかを、あなたに知っていただくのが目的です。
第三部「トラウマからの回復」では、トラウマを癒すために私が最も大切だと思っている三つのことについてお伝えします。それは、魔術のような秘伝ではなく、ごく普通のことです。自分を癒すという過程は、とても地味で普通なのです。
世の中には、「これさえすればすぐ楽になる！」「一日五分で大丈夫！」と言ったキャッチフレーズがあふれていますが、「このセラピストにかかりさえすれば、この治療を受けさえすれば、この病院に行きさえすれば、この講座を受けさえすれば、私は楽になる」という、魔法の処方箋は、残念ながらありません。でも、地味でも地道でも、確実に今より楽になる方法はあるのです（そしてこのやり方が、結果的には一番早く癒される方法であることを、私は経験的に知っています）。
本書全体を通じての隠れたテーマは、「この世はパラドックスに満ちている」という真理かもしれません。この本も、ある意味パラドックスだらけです。「トラウマに原因探しはいりません」と書きながら、トラウマを引き起こすであろう「原因」のいくつかについて解説しています。「癒しは一人ではできない」と断言しつつ、一人でもできるエクササイズもいくつか取り上げています。
そしてこうした矛盾は、すべて正しいと私は思っています。本当の癒しは、あらゆる要素を内包しています。それは、人間という生き物、つまりあなたという存在が、黒か白かで分類できるような単純なものではなく、有機的で深淵で全体性を持つがゆえに当然のことなのです。なので、読みながら「さっき書いてあったことと全く逆のことが書いてある！」と思っても、どうぞそのまま読み進めてくださいね。
前書きの締めくくりに、私が癒しにとって最も大切だと信じていることを書きます。
それは、「癒されたいというあなたの意志」です。
「自分を癒そう」と決意するのは、あなたにしかできません。
そして、意図を宇宙に向かって宣言することが、一番大切で不可欠なことです。意図さえ自分で明確にできれば、あなたは必ず、癒しのために必要なセラピストやものごとに導かれます。あなたがこの本を手にとっているということ自体が、あなたの意図の賜物なのです。
私はそんなあなたに心からの賞賛を送ります。
この本があなたにとって、つらい時に何度でも読み返したくなるような相棒になることを心から願っています。
お読みいただき、感想を寄せていただければ本当にうれしいです。
お待ちしておりますm(_ _)m。
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