本物のヒーロー


世の中には、いわゆる英雄視されている人々がたくさんいます。

最も分かりやすいのは、スポーツ選手でしょう。

最近引退した浅田真央選手をはじめ、
同じフィギュアスケートの羽生弓弦選手、
野球のイチロー選手、
体操の内村航平選手など、
子どもたちが憧れるヒーロー、ヒロインが、スポーツ業界にはあふれています。

40歳を超えても現役を続けるスキージャンプの葛西紀明選手などは「レジェンド」と呼ばれているくらいです。
(うちの夫も最近、「葛西紀明のレジェンドストレッチ」というDVD付きの本を買っていましたっけ 笑)

 

確かに彼らの偉大さは否定しようがありません。

もちろん持って生まれた才能もあるでしょうが、
オリンピックやプロスポーツ界で結果を出す選手はみなおそらく、
血のにじむような努力をして、現在の場所にいるのでしょう。
だから彼らに惜しみない喝采が送られるのも、国民栄誉賞が与えられるのも、ある意味当然のことです。

 

でも実は私、彼らに匹敵する、すごい人たちに日々会っています。

 

私の元へ来てくださるクライアントの皆さんです。

 

全員ではもちろんありませんが、
私のクライアントさんには、壮絶な幼少期のトラウマ体験をくぐり抜けてきた方が大勢います。

 

性的、身体的虐待はもちろん、
親の精神病、アルコール依存などで家庭内が崩壊していた人、
激しい暴力を目撃して育った人など、
私だったら、とても生き延びられなかったろう・・・という過酷な環境を、生き抜いて大人になった方たちです。

 

まずは、そうした壮絶な環境を生き延びたというだけで本当にすごいことです。

しかも、何の助けもなしに。

映画の中のヒーロー、ヒロインは、
ものすごく屈強だったり、
特別な力(フォースなど)に恵まれていたりしますが、
私のところに来るヒロインたちは、何の力もない小さな子どもでした。

 

そんな無力な小さな子どもが、
何の助けもなしに、
ほとんどの場合は、ほっとできるような逃げ場もなく、
24時間365日を耐え抜いて大人になっていく。

 

これを英雄と言わずして、何と言いましょう?

 

しかも、大人になって、ようやくそうした環境から逃れ、
一人暮らしを始めたり、安心できる相手と結婚したりしても、
今度は、その過酷な環境を生き延びるために身につけたいろいろなスキルが、
逆に自分を苦しめ始めます。

 

それはどういうことかというと、
危険を避けるため、いつも周りに注意を張り巡らせるのが癖になり、
そのせいでリラックスができなくなってしまい、
不眠や動悸、パニックに悩まされる。

 

あるいは、身体的や性的な虐待を受けているときの耐えられない感覚を感じないよう、常に神経を麻痺させてきたため、
自分が自分から切り離されてしまい(解離と言います)、
いつも現実感がなかったり、
周りと自分との間に一枚膜がかかっているように感じたり、
生きている実感がなかったりするなど。

 

特に、解離状態にある人は、現実的なものごとを処理するのが、本当に大変になります。

私のクライアントさんの中にも、
いつもぼーっとしていて考えがまとまらないので、
すごく簡単なメールの返信を1本書くのにも40分以上かかってしまったり、
不注意でとにかくよくものをなくしてしまうから、
両肩で背負えるリュックサック以外のかばんは使えないという人もいます。

なくさないように、スマホをいつも首からぶら下げている人もいます。

セラピーに来たときに、「この1週間どうしてました?」と聞いても、
「えー・・・何してたっけ・・・。覚えていません」と答える方もとても多いです。

 

そういう、常に霧の中に置かれているような方たちが、
それでも何とか、毎瞬毎瞬、本当に本当に頑張って、日常生活を送っている。

 

それは、普通の人が普通に日常生活を送るより、何百倍も大変なことです。

スポーツ選手がオリンピックに出るために、日々トレーニングを積むのと同じくらいすごいことなのです。

 

しかも、彼らは外見上まったく普通に見えるので、
そんな血を吐くような努力をしていることは、誰も知りません。

そんなに頑張っているのに、
金メダルや国民栄誉賞がもらえたり、
公の場で賞賛されたり、
道を歩いていてサインを求められることも、ありません。

 

でも私は知っています。
彼らこそが本当のヒーロー、ヒロインです。

この世の誰よりも、賞賛に値するのです。

 

私は彼らとセッションをしていて、いつも思います。

「彼らがトラウマから解放されて、
今、日々生き抜くためだけに使っているその膨大なエネルギーを、
自分らしい人生を生きるために使えるようになったら、
彼らは、どんなすごいことを成し遂げるんだろう」

 

・・・それが見たいので、私は彼らとのセッションにいつもワクワクするのかもしれません。

 

そういう、本物のヒーローたちに日々会えることも、
彼らを応援する唯一の観客であることも、
すごく贅沢だなと思います。

 

でもできれば、彼らのすごさを、世界中の人たちに知ってもらいたい。

 

本物のヒーローたちは、あなたのすぐそばにもいるのです。

 

今日もどうぞ良い一日を。

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