触れるセラピー、触れないセラピー


心理系のセラピストとしては珍しいでしょうが、
私のセラピールームには、
マッサージテーブルが置いてあります。

 

 

私の専門は身体心理療法で、
かつトラウマセラピストでもあり、
自律神経系の自己調整を取り戻すお手伝いが専門なので、
セラピー中に身体に手を触れさせていただくことが
よくあるからです。

 

 

身体に触れるのは、
ロルフィングやマッサージなどのボディワークとは違い、
相手の身体の悪いところを修復するためではなく、
単に本人の自律神経の自己調整を
サポートするためなのですが、

それでも、
タッチは非常にパワフルで、
あっという間に身体がゆるんだり、
必要な解放(震え、発汗、熱の放出など)が起きて
神経系が整っていくことが
しょっちゅうあります。

 

 

そんなにパワフルならば、
来る方全員に
マッサージテーブルの上に横になってもらえば
よさそうなものですが、
私は普通の、
一切相手の身体に触れずに行うセラピーも
同じくらい大切だと思っています。

 

 

その理由はいくつかあります。

 

 

ひとつには、
性的虐待など、
触れられることによる
ネガティブな経験が多い方の場合、
誰かに身体を触られることそのものが
パニックや解離の
引き金になることが
あるからです。

 

 

もちろん、
そういう方の場合も、
ポジティブなタッチは
すぐれた修復体験になるので、
最終的には
触れられることの心地良さを
感じてもらうことは大切なのですが、

 

 

そのためには、
ゆっくりゆっくり、
普通のセラピーを
積み重ねていくことが必要です。

 

 

もうひとつは、
こちらが触れて行うセラピーだと、
自律神経系が整っていったときに、
クライアントさんが、
それをセラピストのタッチのお陰だと
勘違いしてしまうことが
あるからです。

 

 

(「自分の身体がゆるんだのは、
セラピストの手にヒーリングパワーがあるからだ」など)

 

 

でも、
こちらが指一本触れずに、
自分で自分の感覚に意識を向けていくだけで
身体がゆるむと、
それが自分の自然治癒力によるものだということが
はっきり実感できますからね。

 

 

初めてセラピーにいらしたときに、
ただ座って自分の身体に意識を向けるだけで
あまりにも身体がゆるんだので、

「この椅子がいいんだと思います」
カウンセリングルームのソファのせいにする方が
たまにいらっしゃいますが、

 

 

もちろん、
全然ソファのせいではありません。
(というか、そんなすごいソファがあったら私が買いたいです 笑)

 

 

でも
身体に意識を向けるというのは、
それくらい自己調整力を引き出す
パワフルなことなんですよね。

 

 

ということで、
本日もまた、
クライアントさんに触れたり触れなかったりで
セラピーをする私なのでした。