小さい子どもにとって、世界が理解可能な場所であることの大切さ。


日々セラピーをしていて、
本当に感心するのは、
どの人の人生も、
完全にその人の思い通りになっていることです。

 

もうそれは、見事なまでに。

 

この場合の「思い」とは、
いわゆる「コアビリーフ」というやつですね。

 

ただ私、コアビリーフという言葉があまり好きではないので、
別の言葉を使おうと思います(笑)。

私の考えるところでは、
「コアビリーフ」とは、つまり、
「子どもの頃の自分が理解した自分自身と周りの世界」
のことです。

例えば、
「この世は危険な場所だ」
「人は信用できず、頼りになるのは自分だけ」
「私はどこかおかしい」
「私には愛される価値がない」
……などといった思い込みです。

 

もちろん、これらはすべて思い込み(ビリーフ)に過ぎないわけで、
私はかねがね、何故ほとんどの人が、
こんな誤った思い込みを持ってしまうのだろうと疑問に思ってきました。
(もちろん、私にもいっぱいありましたよ、間違った思い込みが・・・)

 

でもその疑問が、
いくつかのセッションを通じて
最近ようやく解けました。

 

今日はそのことについて、書いてみたいと思います。
(ご本人の許可を得て、かつ細部は変更してあります)

 

その女性は、
ものごとが上手く行きそうになると必ず
自分の中にブレーキがかかり、
遅刻したり、
支払いを忘れたり、
電話をかけなかったり……と、
次々に自分が謝りたくなるような状況を引き起こしていました。

 

あるいは、自分はまったく悪くないのに、
何故か他人から理不尽に責められ、
結果的に自分が謝らなければならない立場に追い込まれることもよくありました。

 

セッションをしていくうちに辿り着いた、
彼女の中にいる小さな子どもは、
「わたしがわるい」と思い込んでいました。

つまり、彼女の人生は、
まさにその子どもの言う通りに展開していたのです。

 

わたしがわるい。

 

だから、わたしはいつも謝らなければならない。

 

そのために、謝る必要のある状況を常に作り出さなければならない。

 

 

・・・その子どもに寄り添っていくうちに表れたのは、
精神的に不安定で、
何の前触れもなく自分の前から
しょっちゅう姿を消してしまうお母さんでした。

 

お母さんの不安定さは、
もちろんお母さん自身の問題で、
小さな彼女にはまったく責任はないのですが、
彼女にとってみれば、
何故お母さんがそんなに頻繁に、
唐突に自分の前からいなくなってしまうのか
まったく理解できないわけです。

 

子どもたちは、
完全無欠な状態でこの世に生まれてきます。

 

まだ思考が発達していない彼らは、
過去のことを悔やむことも
未来を思い煩うこともなく、
完全に今この瞬間にだけ生きています。

 

それが少しずつ、
養育者とのかかわりを経て、
人には近しい相手とそうでもない相手がいることや、
生き物は朝が来ると起きて活動し、
夜になると眠って休息すること、
口に入れるのは食べ物や飲み物で、
それ以外のものは飲み込んではいけないこと、
・・・などなど、
この世で生きるためのルールを学んでいき、
言葉の発達とともに、そのルールを頭で理解するようになります。

 

子どもにとって、
世界のしくみ、成り立ちを理解することは、
この地上で生き延びていくために必要不可欠なことなのです。

 

先ほどの例でいうと、
お母さんの不安定さは
お母さん自身の問題であるわけですが、
小さな彼女にそんなことを教えてくれる人は
周りに誰もいませんでした。

 

彼女にとっては、まったく理解不能な状況です。

 

なので彼女は
自分の小さな頭で
その理由を一生懸命考えます。

 

そして、彼女が出したのは、
「わたしがわるいから、お母さんはいなくなってしまうんだ」
という結論でした。

 

別のあるクライアントさんは、
母親が父親に暴力をふるわれる家庭で育ちました。
その彼女が、セッション中にこう言ったことがあります。

 

「お母さんが悪いことをしたから、
お父さんから殴られるんだと思っていた。
そう理解しないことには、
とても生きていけなかった」

 

小さなこどもは、
自分が置かれている環境から
逃げ出す自由を持っていません。

 

なので、その環境で生きていくためには、
それがどんなに理不尽な状況であろうとも、
それに対して理解(納得)する必要があるのだということ、
それが、頭(思考)を持つ人間の宿命なのだということが、
彼女たちとのセッションを通じて
ようやく私にも理解できました。

 

 

間違った思い込みは、
自分が生き延びるために身につけたもの。
必要があるから、
そう思い込んだのです。

 

そういう、幼い頃に信じてしまった思い込みは、
成長するにつれて
自分の意識の奥底にしまわれていきます。

 

なので、表面的にはそんなことは忘れている。

 

でも、心の一番深い場所には、
当時の自分を生かし続けてくれた
その思い込みがどっかりと居座っていて、
その思い込み通りに展開するように、
その人の人生を操作していきます。

 

さまざまなセラピーは、
その思い込みをどうやって書き換えていくかに
心を砕いてきました。
たとえば催眠療法やNLPもそうですし、
精神分析や認知行動療法もそうです。

私の大好きなルイーズ・ヘイは、
素敵なアファメーションの本を数多く出していますが、
アファメーションも、
自分の潜在意識を書き換えるのに有効な方法です。

 

でも、思い込みを書き換えるのに、
脳や頭、
思考や行動のレベルだけで取り組むには
限界があると私は思っています。

 

なぜなら、
子どもの頃の思い込みは、
文字通り
「骨身に染みて」いるからです。

 

ならば、
その「骨身」に直接働きかけた方が、
ずっと早いし効果的だと思いませんか?

 

自分の身体に直接気づきを向けていくことで、
奥底にある思い込みにアクセスしやすくなるし、
身体を通じれば、その、
元々自分の本質にそぐわない思い込みも
無理なく解消していけるのです。

(身体は、自分に不必要なものを外に出す天才ですからね!)

 

自分が生き延びるために必要だったと思うと、
そうして間違って思い込んでしまった幼い自分のことが、
とても愛おしくなります。

 

身体を通じて、
その小さな自分と対話して、
身体を通じて、
少しずつその思い込みを外に出してあげる。

 

その繰り返しで、
必ず、間違った考えは自然にほどけていきます。

 

カラダって、本当にすごいのです。

今日もどうぞ良い一日を。

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