この世界で自分自身でありつづけること〜今どきの若い人は素晴らしい!その3


今日は、最近読んでとても面白かった本をもう1冊紹介します。


小林せかいさん「ただめしを食べさせる食堂が今日も黒字の理由」です。

 

この本の広告を新聞で見て、迷わず図書館で予約しました。タイトルだけ見て読みたくなった本に出合ったのは久しぶりです(笑)。

その後ネットをいろいろ検索して知ったのですが、著者の小林せかいさんは、すでにいろいろなメディアで取り上げられている有名な方なんですね。

彼女は東工大を出てIBMやクックパッドでエンジニアをされていたバリバリのリケジョで、学生時代からの飲み屋バイトで接客を学び、退職後に大小さまざまな飲食店で修行を積んだ後、神保町にカウンター12席の小さな飲食店「未来食堂」を開きます。

その飲食店を作った理由というのが、「誰もが受け入れられ、誰もがふさわしい場所」を作りたかったからだといいます。

そして、食材リストから2品を選んでオーダーできる「あつらえ」のシステムや、50分店を手伝うと一食分が無料になる「まかない」のシステム、その「まかない」券を使わない人が店の前に貼り、それを誰でもはがして一食分の無料チケットとして店で使える「ただめし」のシステムを作り、事業計画書や毎月の収支報告書をネットで公開し、月に一度、店で18歳未満の人しか入れないサロンも開催しています。

 

著作を読むと、高校時代に2か月間家出して歌舞伎町で働いてみたり、
学生時代はずっと着物を着て過ごしていたりと、
どんなときでも、どんな環境にいても常に自分自身でいること、自分のままであることを選択し続けてここまで来た方なんだなと感じます。

 

・・・むっちゃカッコいい。
・・・・そして、むっちゃインディゴだ・・・(笑)。

 

彼女を取り上げた番組をyoutubeで見ました。
その番組の中で、彼女はお店のカウンターの中に座って黙々と1冊の本を読んでいいました。
その時に流れていた、ディレクターと彼女との会話です。
(映像が削除されてしまっているので、完全に正確な表現ではないかもしれませんが)

 

ディレクター「何の本ですか?」

せかいさん「貨幣経済についての本です。
貨幣とは何なのか。どれだけ考えても分からない」

 

・・・はい、ここにもいましたね。世の中の常識そのものをまず疑ってみる魂が。
いろいろなお店での修行中も、さまざまな業界の常識にぶつかったようですが、
それを鵜呑みにせず自分のやり方を貫いて、結果的に未来食堂は大繁盛、毎月かなりの黒字を出していらっしゃるのはさすがです。

ネットで決算や事業計画書を公表しているのは、IT業界のオープンソースという概念と関係していると彼女はいいます。

「無料(フリー)であることが重要なのではありません。可視性高く、他人も成果物に対して意見できる透明性(オープン)が重要です。・・・”看板メニュー”という名の下にレシピを隠す飲食店や、”セミナー”という名の下に知識を隠蔽する飲食店開業コンサルタント。『自分の知識を隠すことで勝者となる』ことが既存のビジネスのあり方だとして、私はもっと別の未来があると思うのです。・・・知識をシェアする未来を望むのであれば、まずは自分が身を持って示さなければいけません。」

・・・何て素晴らしいんでしょう。

彼女のこの言葉を読んで、カーンアカデミーのことを思い出しました。

カーンアカデミーは、米国のサルマン・カーンさんが設立した教育団体で、小学生から大学レベルまでの数学その他さまざまな教科の講座を3000以上youtubeにアップしており、
それらの動画はすべて無料でアクセス可能で、世界中のだれもが学びたい科目を学びたい時に学べるようになっています。
(何と、知りませんでしたが、今では日本語サイトもあり、日本語でも講座がたくさん見られるんですね。こうなると本当に、既存の学校に行く意味そのものが問われてきてしまいますよね)

 

彼女が神保町に食堂を開きたかったのは、本が好きで、自分の蔵書もお店に置いてお客さんに自由に読んで欲しかったからだといいます。

そして、自分の蔵書リストをブログで公開していらっしゃいますが、そのラインナップがまた、センスが良すぎます。

私も本の虫で、人の本棚を見るのは大好きなのですが、彼女がエンジニアであると同時に大変なアーティストでもあることが、蔵書リストから良くわかります。

 

彼女は、こんな素敵な食堂を作りながらも、そこでコミュニティを作る意図はないと言います。

「マスに向かって宣伝をして、ファンを束ねて”コミュニティ”を作る。そういったあり方は1人1人、なかでも”あなた”が埋もれてしまいませんか。私はそんな風に”あなた”をタグ付けしたり、グルーピングしたりしたくないのです。
・・・ただ”わたし”と”あなた”がいる。そのミニマムな関係を、どこまでも大事にしていきたいのです」

 

・・・うーん、まさにその通り。言葉もありません。

人間は一人では生きていけないので、コミュニティという居場所を作り、そこでお互いをサポートし合うというやり方は、一般的には良いものだと思われていますが、(そして私もずっと、コミュニティは良いものだと思ってきましたが)
どんなコミュニティでも、いったんそれが形成されると、そこに属している人と属していない人とに線引きされてしまいます。つまり、コミュニティは人を分断するものにもなりうる。
そして、「コミュニティのため」に、自分の気持ちにはそぐわないことを我慢してやるようになってしまうこともあります。(私にもむっちゃ心当たりありです・・・苦笑)

 

コミュニティの持つあやうさをちゃんと見抜いているせかいさんはきっと、
常に目の前にいる人を一番大切にして生きていらっしゃるんだろうなあと思います。

 

そんなせかいさん、昨年末には、日経Womanのウーマン・オブ・ザ・イヤーを受賞されました。

 

その受賞スピーチの最後の言葉にまたしびれました。

 

『最後に一言だけお伝えしたいことがあります。
私は、未来食堂を始めるために会社を辞め、パートやアルバイトをしながら修行を重ねました。

そんな過程を報道で知った方から、「そうやって気ままにチャレンジできるのも独身だから」といったコメントを頂くことがよくあります。
しかしそれは違います。
私は結婚しており、6歳の子どもがいて、今妊娠5ヶ月目です。

「こんなチャレンジが出来るのは独身だから」という発言に、私はNoと答えます。
しかし私は、母であることに自分のアイデンティティはありません。
ですので、これ以上のコメントは特にありません。

環境が、あなたの行動にブレーキをかけるのではありません。
あなたの行動にブレーキをかけるのは、ただ一つ、あなたの心だけなのです。』

 

もう、どんだけカッコいいんですかあなた。

確かに、どこからどう見ても全然母に見えない・・・。
でもそういう、母親の役割帽子を全然かぶらない母親に育てられるせかいさんの子どもは、本当に幸せだと思います。
きっとご自分のお子さんにも常に、人間対人間として向き合っているんだろうなあ。

 

ちなみに、「せかい」は本名なんだそうです。
まさに名前どおりの方。何てぴったりな名前をご両親は彼女にプレゼントしたんでしょう。
おまけに映像を拝見すると、とても可愛らしい方で、ホントに宇宙人丸出し(笑)。
まあ、世界には宇宙も入っていますからね、広い意味では。

 

同じ時代にこんなに優れた人が生きているのを、本当に幸せに思います。
いつか必ず未来食堂にごはんを食べにいき、ついでにまかないもさせてもらうのが夢です。私もかなり規格外の母なので、彼女と子育て談義もしてみたいなあ。
(・・・断られるかな?笑)

 

今日もどうぞ良い一日を。

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