「本気でトラウマを解消したいあなたへ」の出版から1ヶ月。
まだまだ多方面からの感想をいただいております。
今回の感想を取り上げるのは、実は結構わたしにとってはチャレンジで、
もっと早く紹介したいと思いつつ、書きあぐねたまま時間が経ってしまいました。
なぜなら、この感想の執筆者が、わたしの文章力ではとても描写できないほど個性的な人物であり、かつ私の大好きな友人だからです。
伊地知恭右さん。
バリバリの理系で、札幌の研究所で寒冷地の交通政策の研究(だと思う。ド文系の私は何度聞いてもよく分からない💦)をする一方、古本のエキスパートでもあり、週末には各地のイベントに古本屋を出店しています。
彼とは、もともと同じ保育園に娘同士を通わせていた縁で知り合ったのですが、
夫婦揃っての第一印象が強烈すぎて、最初はとても話しかけることができませんでした。
(なんというか、二人して長髪であまりにもヒッピーな感じ。とても普通に会社勤めをしてる人には見えませんでした。バーニングマンに毎年参加してそうな感じと言ったら伝わるかな・・・笑)
でもあるとき、保育園の別のパパ友(これまたすごい人物。実に個性的な親が集まる保育園だったのです)が主催したイベントで、彼の出店する古本屋を見たときに、そのセレクションのあまりの趣味の良さに感動して会話を交わしたのがきっかけで、一気に家族ぐるみの付き合いになりました。
(今や奥さんとも大の親友です。彼女がまた超大物なのですが、その話はまた別の機会に)
その時の出店棚がこちら。ぜひ拡大して背表紙をご覧ください。
シュタイナーにグルジエフにラム・ダスにカスタネダ。まるで私のためにセレクトしてくれたかのような直球ど真ん中のラインナップです。そして下段の絵本たちがまたいい。
以下はすべて、彼のフェイスブックからです。各地の出店イベントと、かつて自宅でも週末開店していた古本屋の棚より。
とあるイベントでの出店ブースです。ディスプレイもセンス抜群(ちなみにこの男性は本人ではありません)。
こういう趣味の良すぎる本選びをする一方、ものすごく詩的な文章を書く人で(もちろん詩も書くらしい)、
今回、彼のことをネットでいろいろ検索していて、彼の京大の博士論文のページを見つけましたが、その博論のタイトルがなんと、
「大衆性の低減を導く実践行為についての探索的研究」
・・・詩かよ(爆)。
という、すさまじい頭脳と芸術センスと文才の持ち主でありあらゆる本を読み込んでいる彼が、
彼にしか絶対書けない感想をフェイスブックに投稿してくれたので、それをここに転載させていただきます。
◆藤原ちえこ×安冨歩
◆からの、ヴィトゲンシュタイン×福田恒存
(注:めっちゃ長文)
ご存知の方、お気づきの方もいるかと思いますが、私は、それなりに本を読むほうです。漫画から哲学チックなものまで雑多ですが、それらを「読む」中で大切にしていること、というか期待していることがあります。それは、
「世界の美しさへの道標があること」
その形式は問いません。場合によっては記されていなくてもいい。ただ、ある程度の期間そんなことを期待していると、書いていなくても感じられるようになります。ほんまかいな?と思う方もいるかもしれません。でもほんまかどうかを、説明する必要も、まして証明する必要もありません。私がどう感じるか、だけが大事なのです。
一方、「世界の美しさ」って何だい?ってことになると、これはぜひ説明しなければと思っています。でもまだ上手にできません。まだまだ誰かの言葉を借りないとできません。つまり、私の読書は、おおよそ「世界の美しさを語る言葉の欠片、それを集める作業」なわけです。
さて、そんな私が出会った最近の一冊。
藤原ちえこさん著
『本気でトラウマを解消したいあなたへ』
https://www.amazon.co.jp/…/B084CTT8…/ref=dp-kindle-redirect…
私は、ようやく「おれはどうやら、結構、変わり者だ」と自覚することができましたが、それにしても「本気でトラウマを解消したい」というほど、深く生きづらさを抱えているわけではない。そんなわけで、この種の本は初めて手にしました。その理由は、単純。著者、藤原ちえこさんが大切な友だちだからです(痒!笑)。
この後、(私にとって)一番大切なことを書きますが、その前に(私のように)本気でトラウマを解消したいわけではないあなたへ一言。この本。ぜひお読みください。トラウマの認識を正しく改めることができます。そして、世の中への目線が、ではなく、あなたの内側への目線(つまり内観)が温かく、深くなります。(同著amazonレビュー参照)
はい、そんなことを言われてもピンとこない方、どちらかと言えばたぶん、頭の硬い方に謎のおまじないをかけます。
「あなたは、神秘を信じますか?」
え…?…っと……いきなりスピリチュアル…なかんじ…?
とひかれても困るので、「はい!はい!!信じます!!超好きです!!!」というなぜか前のめりな方にもおまじないを。
「あなたは、合理性、科学を信じますか?」
おーーーー……、おぉよおぉよ。
なんか突然すごい展開になってしまいました。
いや、実はこのおまじないの件、特にいらないのですが、実験で書いてみました。
さてさて、『本気でトラウマを解消したいあなたへ』と併せ読みをしていたのが安冨歩さん著『合理的な神秘主義:生きるための思想史』。
この書は、著者が「合理的な神秘主義」という観点に辿りつくまでの思想の系譜、すなわちミルグラム(アイヒマン実験の人)からフロイトへ、その後ミラー(幼少期の虐待が個人に社会に及ぼす影響を正しく記した人)、飛んで孔子(学びの本質を説き、世界の秩序に学びを置いた人)から孟子、あとはもうマルクス、スピノザ、ソクラテス、ポラニー、ヴィトゲンシュタイン、清沢満…(以下略)といった巨人たちの系譜を独自に解釈しながら、最後に「合理的な神秘主義」とは何かを語るものです。なんて書いてもさっぱり無意味ですね。
このめちゃくちゃ思想的というか哲学的というか、ちょっとめどくさそうなことを扱った書と、藤原ちえこさんのトラウマの書の驚くほどの一致を、一部ご紹介したいのです。
そこには
世界の美しさを語る
世界の美しさをカタチづくる
あるいは世界の美しさに近づく上で
欠かすことのできない
同じ種類の欠片がちりばめられていました。
*****************
(丁寧に引用するとやたら長くなるので、著者の論旨が誤解されない範囲で適宜組みなおしています)
・ヴィトゲンシュタインは、「語りうるもの」の境界を確定しました。(参照『論理哲学的論考』)。
・そのことにより、その境界の外に「語りえぬもの」が広がっていること、つまりは、世界があるということそれ自体が神秘にほかならない、ということを示したわけです。
・神秘とは、世界がいかにあるかではなく、世界があるというそのことなのです。
・が、この文がちょっとわかり難い。そして最も重要。
・どれほど重要か。この文の「神秘」を「生きる」に、「世界」を「あなた」に置き換えてみると…
・「生きるとは、あなたがいかにあるかではなく、あなたがあるというそのことである」
・私(伊地知)が読み解くに、藤原さんの著書の重要な点はこの言葉に凝縮されると思います。
・つまり、「生きることは神秘」であり「世界はあなた」なのです。
・もう一度併記します。
・神秘とは、世界がいかにあるかではなく、世界があるというそのことなのです。
・生きるとは、あなたがいかにあるかではなく、あなたがあるというそのことなのです。
・ヴィトゲンシュタインが厳密に、論理的に整理したこと、安冨さんがその知性と情緒によって汲み取ったことは、藤原さんが大切にしていることと全く同じだったのです。
はい、これが「世界の美しさを語る欠片を集める作業」です。
もう一つ。
・安冨さんは、ヴィトゲンシュタインの「語りえぬもの」やマイケル・ポラニーの「暗黙の次元」、アリス・ミラーなどの「真実」とを総合し、次のような戦略を考えました。
・世界を支える神秘の力を前提とし、その発揮を阻害し抑圧するものを、合理的・科学的方法によって解明し、排除する。
・これが、「合理的な神秘主義」です。これを通じて…
・非線形性な世界(不確実な世界/秩序が無秩序を生む/無秩序が秩序を生むような世界)、そのような世界に直面しながら生きている、という(合理的かつ科学的にも証明された)事実の前では、何等かの「確実なもの」にしがみ付くのは「隷属への道」でしかない。そこから脱しなければならない、というわけです。
・私たちは、複雑さのなかで動的に対応して生きていく能力を、生まれながらに持っているのであり、その我々の身体に込められている驚くべき創発的計算能力を信頼し、その感覚に従って、信頼しうる人を信頼し、信頼しえぬ人を信頼しないで、頼りになるネットワークを構築して生きていけば、それで十分なのです。と言います。
・「合理的な神秘主義」とは、「世界を支える神秘の力を前提とし、その発揮を阻害し抑圧するものを、合理的・科学的方法によって解明し、排除する」こと。
・これを、先ほどと同様に「神秘」を「生きる」に、「世界」を「あなた」に置き換えます。
・「あなたを支える生きる力を前提とし、その発揮を阻害し抑圧するものを、合理的・科学的方法によって解明し、排除する」
・これはもう、完璧に『本気でトラウマを解消したいあなたへ』に向けた藤原さんの覚悟と同じものだと思われます。
・「合理的・科学的方法によって」という部分が、トラウマの解消と相容れないように感じる方もいるかもしれませんが、トラウマの解消というプロセスが、これまでの心理学等の発展(および反省)の上に成り立っていることは相違ないでしょうし、経験知(本当の学び:孔子)によってより温かく、慎重に導かれていることは本書を通じてよくわかります。
・最後に、一番わかりやすい合致をご紹介。
・「合理的な神秘主義」の立場、ものの見方を例えた場面です。
・たとえば、まぶたに大きなカサブタのようなものができてしまって、目が開かなくなり、見えなくなった人がいたとします。そのカサブタを医者が、眼球周辺の部位を傷つけないようにうまく除去し、その結果、目が開いて見えるようになったとき…
・「医者が患者の目を見えるようにした」というのはおかしい。目は元々見えており、まぶたが開かなくなって見えなかっただけなのだから。より正確にはこうです。
・「医者が合理的な方法で、患者のまぶたのカサブタを取ることで、目が見えるという能力の発揮を阻害していた要因を排除した」この立場をとるのが「合理的な神秘主義」なのです。もはや自明なとおり、これは、もうトラウマの解消にのぞむ態度と同じものに違いない。
・「藤原ちえこさんが合理的な方法で、クライアントの解離や抑圧(本書参照)を解消することで、豊かに生きるという能力の発揮を阻害していた要因、トラウマを排除した」
******************
以上、いかがでしょうか。
学術的思考と、実践が濃厚にリンクする、しかも「世界の美しさ」を共有しながらリンクするという、貴重な読書経験となりました。
最後に、また別の角度からのリンク、一致、すなわち「世界の美しさの欠片」をご紹介します。
・『保守とはなにか/福田恒存/編:浜崎洋介』
・福田は言う、「自分より、そして人間や(単に相対的な)歴史より、もっと大いなるものを信じる」必要があるのだと。それはキリスト教的な「神」であるかもしれないし、ロレンスの言う「宇宙の有機性」かもしれない。だが、日本人である福田は、その「絶対者」が呼び出される場所に「伝統」や「自然」という言葉を見出していった。(同著、編者解説、より)
・福田は言う。「何よりも必要なのは、人から何と言われようと、もっと自分を大事にする事だ、自分の本当の声に耳を傾ける事だ」(同著、続・生き甲斐といふこと、より)
このずいぶんと長い、そしてちょっと面倒な欠片集めの旅。
最後までお付き合いいただいた方に、なぜかしら感謝いたします。
・・・すごい文章(笑)。
正直、これ以上ないほどの単純な実用書であるわたしの著作を、こんなに哲学的に、あろうことか、わたしが心から敬愛する安冨歩さんの著作と並列して論じてくれるとは。
(ウィトゲンシュタインと福田恒存は、浅学な私にはコメントしようがないのでスルーしますごめんなさい 笑)
ものすごく光栄です。
個人的には、合理的な神秘主義とわたしの本との間にそれほど共通点があるとは思えないのですが、
(あの本途中で挫折したし・・涙)
以前このブログでも取り上げた、安冨さんの「生きる技法」とはすごく共通点があると自分でも思っています。
(・・そっか、つまり安冨思想とわたしの著作は親和性があるのか 笑)
ほんとうに、むちゃくちゃ光栄です。
(なんども言ってしまうo(^▽^)o)
そして彼の投稿にはこんな恐縮する写真まで。
個人的には、後ろの本棚の「トマトの巨木の生命思想」というタイトルがむちゃくちゃツボ(笑)。読みたいぞ。
ということで、もはや本のレビュー紹介の記事とも言えないような記事ですが、
(ただの友達自慢かもしれない 笑)
本そのものは、ものすごく自信を持って世の中に送り出しておりますので、
よろしければ、どうぞお手に取ってくださいませ。
必ずや、あなたのお役に立てます。
【その他のお知らせ】
3月19日、札幌のフェアトレードカフェ「みんたる」で、東京に引き続き、出版記念のお話会を開きます。
今回インタビュアーになってくれるのは、去年出会って意気投合した、札幌市内のおしゃれなカフェcup 4 lifeの店主であり元中学校教師である堀弥生さんです。
東京とはまた全然違った時間になると思うので、お時間のある(そしてコロナウィルスをぜんぜん気にしない 笑)みなさま、ぜひおいでください。
イベントページはこちら↓
ここだけの話ですが、
伊地知恭右さんも、このお話会に「参加予定」ボタンを押してくださっています。
(事前申し込み不要なので、確実に出席とは断言できませんが・・・。本人に聞いてないし 笑)
一度は会って損のない男です。彼に興味がある方もぜひおいでくださいo(^▽^)o。
(ちなみに彼はその後髪を切り、今はちゃんと普通の男性の髪型です 爆)
お話会のあとは、来月大阪に引っ越す(ちょくちょく戻ってくるとは思うけどね 笑)藤原のささやかな壮行会も開いていただく予定ですので、お時間ある方はそちらにもぜひどうぞ。
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