すべての中学生(そして大人も)必読の本


本の話題が続きますが、
最近わたしが、常に持ち歩いているのが、この本。

安冨歩先生の「生きる技法」です。

まだ購入して日が浅いのに、すでにボロボロです。
おまけに付箋だらけ(笑)。

 

 

それくらい、わたしにとっては衝撃的な本でした。

 

安冨歩さんは、このブログの読者はとっくにご存知だと思いますが、
女性装の東大教授です。

 

わたしは数年前から安冨さんの大ファンで、7月の参院選挙では1日旭川での選挙戦を手伝い、夢のような時間を過ごしました。

 

専門は経済学で、本業ですさまじい業績を上げている一方、
論語とマイケル・ジャクソンの研究者でもあり、油絵を描いたり、曲を作ったり、楽器を演奏したり、歌ったりと、その才能はとどまるところを知りません。
ルネッサンス時代の芸術家みたいです。

(そして本来、人間はそうあるべきだと思います。一人にひとつの専門だけって誰が決めたんでしょう)

 

わたしは東日本大震災のあとにまず彼女の「原発危機と東大話法」を読んで、その本質を突いたキレッキレの文章に感銘を受け、
こちらの記事を読んでものすごく感動しました。

なぜ日本の男は苦しいのか? 女性装の東大教授が明かす、この国の「病理の正体」

 

さらに決定的にファンになったのが、彼女の高知大学での集中授業のシラバスをたまたまネットで見つけたことです。

「国立大学の授業は、国民の税金によって支えられているのであり、原則公開すべきだと考えている」と、
その授業のビデオをすべてyoutubeで無料公開していたうえ、
シラバスの中身が、こんな強烈な文章でした。

履修学生に求めるもの:
創造的な構えで受講し、決して死神を教室に持ち込まないこと。

授業科目の主題:
受講生が、自分の目にする出来事を、自分の体で感じ取り、自分の頭で考えて、対処し、行動できるようになることを目指す。

授業の到達目標とカリキュラムチェックリスト:
・到達目標などという概念に惑わされないようになる
・シラバスを真に受けないようになる
・授業で習ったことを真に受けないようになる
・自分の興味がどこにあるかを感じられるようになる
・自分の人生の何がおかしかったかを見つめられるようになる
・おかしなことをおかしいと感じて行動できるようになる
・強くやさしい人になる

 

・・強くやさしい人になる。

 

大学の授業の到達目標がこれですよ奥さん。

 

最高じゃないですか?

 

そして安冨さんの目指す、
「自分の目にする出来事を、自分の体で感じ取り、自分の頭で考えて、対処し、行動できるような(=授業で習ったことを、偉い先生が言っているからというだけの理由で盲信しないような)人間」
こそが、真の意味で自由で自立した、本来の人間像なんだと思います。

 

そして、そのような真に人間らしい、意味のある生き方を指南してくれるのが、この「生きる技法」です。

 

前書きで、安冨さんはこう書いています。

 

生きるにはどうしたらいいか。そればっかりは、誰も教えてくれませんでした。私は既に四十代も後半になりますが、思い返せば親も先生も先輩も、誰も彼も、いろんなことを教えてはくれましたが、そのほとんどは、ただの押し付けでした。私が必要としている生きる技法ばかりは、誰も教えてくれなかったのです(中略)。

この数年間にわたって私は、この問題についてずっと考えてきました。そしてようやく、生きるための技法が、少しずつわかってきたように思います。考えてみればそれは、簡単なことだったのです。

しかし、私が受けた教育や学んだ学問の大半は、この簡単なことを隠蔽するように構成されていました。ですから、この簡単なことを見出すのが、とても大変だったのです。私を縛り付けるしがらみから抜け出さなければ、それを見ることができなかったのです。

この本は、こうやって私が見出した生きる技法についてのまとめです。さまざまな本を読み、あれこれ考え、多くの人と対話して、そのうえいろいろと行動した結果、かなり使えることはわかっています。

ここに書かれていることは、みなさんの人生のお役に立つものと信じます。特に、若い方のご参考になるものと思います。若ければ若いほど、呪縛から抜け出すのは容易であり、生きる技法が活用される場面も多いからです(後略)。

 

確かに、「生き方」については、学校では教えてくれません。
今年から中学校でも道徳が必修になったようですが、
子どもたちにいわゆる「愛国心」や社会的な善悪、正誤を植え込むというのが、文科省が必須にした理由でしょう。
でも本来、道徳の時間は、「幸せに生きる方法」を教えるための時間であるべきです。

その意味で、この本以上に道徳の教科書にふさわしい本はないと思います。

 

帯に「東大教授が、自分自身のために命がけで考えた」とある通り、
この本は、安冨さんが自分で探求し、実際に行動してみた上で到達した、生きるために真に役立つ情報がぎっしり詰まっています。

この本では、8つのテーマについて取り上げられています。

1 自立について

2 友だちについて

3 愛について

4 貨幣について

5 自由について

6 夢の実現について

7 自己嫌悪について

8 成長について

それぞれの章で、「命題」として、安冨さんが見出した、または再発見した真理が詳しく説明されているのですが、
(その構成が本当に読みやすいのです。中学生でもすんなり理解できる文章です)
彼女が「生きるための根本原理」と呼ぶ、おそらく本書でもっとも伝えたかったであろうことが、「命題1−1」として、まず述べられています。

それは、
「自立とは、多くの人に依存することである」です。

そしてその後に、

「依存する相手が増えるとき、人はより自立する」
「依存する相手が減るとき、人はより従属する」
「従属とは依存できないことだ」
「助けてください、と言えたとき、あなたは自立している」
と続きます。

 

一般には、自立=依存しないで生きること、と考えられています。

しかしそれが実は、まったくの逆であることを、安冨さんは鮮やかに説き明かしています。

 

わたしも、職業柄、人に助けを求めることの大切さは熟知していて、折に触れてそのことについては書いてきました。
こちらこちらなど)

助けを求めることは、弱さではなくて強さの表れだと私はずっと主張してきましたが、
本当に強い人とは、すなわち自立している人ということですものね。

 

この命題の詳しい説明は、ぜひ本文を読んで欲しいのですが、
その中で安冨さんは、こう書いています。

 

「自立した人というのは、自分で何でもする人ではなく、自分が困ったらいつでも誰かに助けてもらえる人であり、そういった関係性のマネジメントに長けている人のことだ、ということに気づきました」

 

・・・まさに、その通り。

 

何でも自分でできるというのは、自立とは何の関係もなく、
ましてや、それによって自己肯定感が高くなるわけでもないのです。

何でも自分でできることが自己肯定感を高める必須条件だとすれば、
身の回りのことをすべて自分でするように訓練されている児童養護施設の子どもたちは、この世でもっとも自信にあふれているはずです。
(ほとんどの場合、彼らはもっとも自己肯定感が低い子どもたちです)

 

本物の自己肯定感は、何かを「する」ことによっては決して生まれないというのが、わたしの持論です。
だって、自己肯定感は、「ありかた」だからです。

自らがただ「ある」、ありのままで存在していることを肯定できて初めて、本物の自信が生まれるからです。

 

もう、1章だけでこの本を買う価値が十分あるほどの濃密さですが、
2章以降でも、人生についての重要な命題を、安冨さんは次々に紐解いていきます。

 

結果、わたしの本は付箋だらけに(笑)。

 

すべてを紹介することはできないので、わたしが特に感銘を受けた文章や命題を、以下にいくつか挙げておきます(太字は命題)。

 

「親からの自立を果たすためには、なによりも親以外の人への依存を獲得せねばなりません。それも、自分より上に立つ人に依存するのではなく、自分と対等に付き合ってくれる人、つまり「友だち」を、作ることが、何よりも大切です」

 

友だちとは、互いに人間として尊重しあう関係にある人のことである

 

「友だちを作るうえで、何よりも大切な原則があります。それは、

誰とでも仲良くしてはいけない

ということです」

 

選択肢が豊富にあること=自由ではない

 

成功とは、可能な選択肢の中から、最善の選択をすることではない

 

「自立は、金では買えない」

 

自分の内なる声に耳を澄まして、その声に従う

 

どれかを選択した以上、別の選択肢はもう閉じられている、と感じるのは謝りである

 

自由とは、思い通りの方向に成長することである

 

豊かさは自由を保証しない

 

現代日本では、簡単に飢え死にしないから、怯えなくて良い

 

あなたの人生の目的は、ほかの誰とも違っている

 

・・・これらは、この本で示されている何十もの命題のごく一部です。

 

そして、私が本書の中でもっとも好きだったのは、以下の命題でした。

 

「さまざまの本を読み、自分の人生の苦悩と直面する中で私が学んだことは、

幸福とは、手にいれるものではなく、感じるものである

という驚くべき事実でした。こんな当たり前のコンコンチキのことを、さも新しい発見のように言うのは、頭がオカシイのではないか、と思われるかもしれません。
まさしくそのとおりであって、まことにお恥ずかしいことに、私は頭がオカシイのです。・・・こういうことが理解できない、、ので、エリート大学に入学できたり、学者になったり、東大教授になったりしたのです。どうぞご勘弁を。

しかしなぜこんなことがわからなくなるのかというと、感じるということに対する恐怖心が、私の中に埋め込まれているからです。誰が埋め込んだのかというと、母親だと思います。彼女は私のオムツを、十ヶ月で取ったのが自慢でした。・・・

自分自身を受け入れられるというのは、自分の感覚を肯定される、ということです。人間の感覚というものには、非常に深い計算が込められています。そこから人間は意味をつかみとるのです。それゆえ、人間が世界の意味をしっかりと受け止められるようになるには、自分の感覚を受け入れられるという経験を積む必要があります」

 

そうなんです。幸福はただ「感じるもの」。「感じる」というのは、本当に大切です。

そしてかつての安冨さんのように、感覚を遮断されてきた人間がこの世界には多すぎる。
セラピストとしてのわたしの最大の仕事は、私のところに来る人たちの、奪われた感覚を取り戻す手伝いをすることです。

 

自分が何かを達成したから、業績を上げたから、何かを手にいれたから、幸福になるわけではない。
そして、自分の感覚ほど大切なものはない。
私も、良い大学、良い企業を経て、ようやくそれに気づいたクチです。

 

だからこの本を、中学生全員に読んで欲しいのです。

 

もし私が、中学校時代にここに書かれていることを教えてもらっていたら、はるかに楽に20代、30代を生きられたに違いないからです。

 

もし彼らが、しょうもない校則でがんじがらめになっていたり(このリンク先もぜひぜひお読みください)、学校という理不尽なシステムの中で溺れかけていたり、
友達ができなくて苦しんでいたりしたら、この本はその彼らの傍に寄り添って、もっと楽で楽しい生き方をはっきりと示してくれるはずだからです。

 

この本は、読むと否応なくものごとの本質に目覚めさせられ、
結果的に、読んだ人の生き方を変えるほどの力があります。

わたしも最近、この本がきっかけで、ある大きな決断をし、
決断後、身体が明らかに軽くなり、自分の決断の正しさをありありと「感じて」います。
安冨さん、本当にありがとうございます。

 

中学生をお持ちの親御さん、今年のクリスマスにはぜひ、お子さんにこの本をプレゼントしてあげてください。
これを読めば、彼らの人生が好転すること間違いなしです。

(もちろん、親御さん自身もぜひお読みくださいね!)

 

 

 

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山上亮さんの札幌講座、いよいよ明後日スタートです!
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12月2日と3日に、東京で個人セッションをすることになりました。
残席2名さまです。

藤原ちえこ 東京個人セッションのお知らせ

 

 

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