私の主な仕事は、自分のカウンセリングルームでのセラピーですが、
それ以外に、学校でもスクールカウンセラーとして勤務しています。
昔は、公立の中学校でも2年ほど働いていましたが、
私の方がつらくなって、やめました。
自分が嫌なことは一切しない主義で生きております・・・笑。
今働いているのは、私立の中高一貫の女子校で、
学校嫌いの私には珍しく、10年ちかく勤務が続いています。
何故かというと、そこの学校は、
系列校に全国から不登校生徒を受け入れているこんな素晴らしい高校もあるように、
とにかく先生方が素晴らしい、とても良い学校だからです。
どう素晴らしいかと言うと、
生徒に対して本当に親身な先生が多いうえに、
「私は、不登校の生徒を登校させようとは全く思っていないカウンセラーですが、
それでもいいんでしょうか?」と尋ねても、
「全然構いません。どうぞどうぞ」と言って勤務させてくれるような学校なのです(笑)。
私は、不登校の子どもが学校に来ればいいとは、まったく思っていない人間です。
学校の勉強よりも他にやりたいことがたくさんある子、
大人びていて、同年代と話が合わない子など、
学校というがちがちのシステムになじめない子どもなんて、いくらでもいると思うからです。
そういう、自分がやりたいことがある子、自分をきちんと持っている子は、
私はほとんど何の心配もしていません。
たまにそういう子が相談室に来ると、いろんな話で盛り上がり、
小林せかいさんの「サロン18禁」を紹介して、
「私は正規会員になれないから、今度ぜひ同伴者として連れていってね!」
などとけしかけたりしています(笑)。
しかしながら、そういう積極的な理由で学校に来ない子というのは、ほんの一握りで、
大抵の子は、どこかにしんどさがあるから登校できないわけですね。
そして、そのしんどさを作っているのは、
はっきり言ってしまいますが、ほぼ間違いなく家庭であり、
大抵の場合は、お母さんです。
(私は昔バリバリのフェミニストだったこともあり、
性別や役割で一般論化するのは本当に嫌いですが、
こればかりは、私の経験からはっきりしているので、
世のお母さん方ごめんなさい)
私の見る限り、しんどさを抱えていて登校できない生徒はほぼ100%、
お母さん自身が、非常にストレスを抱えている状態にあります。
ただ、お母さんがそのことを自覚していないケースも非常に多いです。
これは何故かというと、人間誰しも、自分の問題を自覚するのは本当に難しいことだからです。
子どもは例外なく、親を無条件に愛しているので、
(表面上はどれほど反発していても、仲が悪くても)
親がストレスを抱えていると、それを自分の中に取り込んで、さまざまな症状を表してくれます。
症状の現れ方は、例えば起立性障害だったり、摂食障害だったり、潔癖性だったり、リストカットだったり、引きこもりだったり、友達とのトラブルだったり、自信のなさだったり、いろいろですが。
そうやって子どもが症状を引き受けてくれると、
自分の問題に無自覚な親はますます、
「あら、この子はこんなに問題があるのね。困ったものだわ」と、
その症状を子どものせいにしてしまいます。
私は米国で大学院を修了後、ホームレスのためのNPOでインターンをしていました。
そのときに、あるホームレスカップルが、私が働いていたセンターのひとつにやってきました。
センターでは、ホームレスの人々に食事やシャワー、洗濯機や住居、求職相談を提供する条件として、彼らにグループセラピーへの参加を義務づけていたので、
そのカップルも私がファシリテートしていたグループに参加したのですが、
その場でカップルの女性が話したのは、すべてパートナーの男性のことでした。
「彼にはこういう問題があるから、こうすればいい」
「彼は過去にこういう目に遭っているから、こういう風になっている」・・・等々。
その隣で、男性はただ苦笑していました。
よく考えると、その女性だってホームレスなわけです。
路上で生活しているということは、自分だってさまざまな傷や生きにくさを抱えているはずなのに、
彼女が心配するのは、パートナーのことばかり。
彼らに会ったとき、
「自分の傷に向き合うのは、ホームレスでいることよりもずっと難しいんだな」
としみじみ感じた記憶があります。
それほどの状況に置かれてすら、人は自分自身と向き合えないのに、
一見、自分の問題のような症状を示している存在(=子ども)が身近にいれば、
なおさらそれは難しいです。
私はものごとの本質を見るのが好きなので、
不登校の子どもが相談室にリファーされてくると、まずはお母さんとの面接をセッティングしてもらいます。
何故なら、お母さんのサポートをするのが、子どもが元気になる一番の早道だからです。
そして、そのことをお母さんにお伝えすると、
まったく聞く耳を持たない方もいらっしゃいますが、
「実は・・・」と、
夫婦関係の悩みや経済的なストレス、自分自身の生きにくさなどについて話してくださるお母さんも多いです。
そして、自分が定期的に相談室にセラピーを受けにくることに合意してくれるお母さんの子どもは、
その子に直接まったく働きかけなくても、
お母さん自身が元気になっていくにつれて、自然に元気になっていきます。
それはもう、見事なまでに。
お母さんが自分の問題に取り組み始めると、
自分がいかにこれまで、登校をしぶる子どもに登校を強要し、
子どもを自分の思い通りにしようとしてきたのかということが分かってきます。
そして、子どもをコントロールするのをやめて、
自分のことに集中し、自分の人生を楽しむようになると、
子どもはようやく、自由に呼吸できるようになるのです。
win-winの関係ですね。
親子関係って、本当に面白くて、
どちらかがつらくて、どちらかがハッピー・・・ということはありえないのです。
親子とも苦しいか、親子ともにハッピーかのどちらかです。
親が子どもを思い通りにして、それが幸せ・・・と思い込んでいるとしたら、それは親の本当の幸せではありません。
それは、自分の不全感を子どもという外部の存在で埋めているだけだからです。
なので、お母さんが癒されると、子どもも癒される。
お母さんが自分を癒すことは、家族全員にとって非常にお得なのです。
世の中のお母さまがたへ。
子どものことを心配するのは今日限りでやめにしましょう。
そして、自分が誰よりも元気になりましょうね!
それが、本当の意味で子どもをサポートするために、親ができる唯一のことですから。
今日もどうぞ良い一日を。