ご無沙汰しております。近頃、パソコンの前に座るのが非常に苦痛になっています。どうも春先の翻訳仕上げ作業の後遺症が今になって出てきているようです。・・・私は研究者や職業作家にはなれそうもありません(笑)。
今日はとても珍しい催しのため、北海道教育大札幌校に行ってきました。ヴァイオリニストの五嶋みどりさんが同大学の特任教授としてヴァイオリン専攻の学生に公開レッスンをし、それからコンサートを開くという、みどりファンの私には願ってもいないイベントです。何週間か前に新聞で知った私がすぐに整理券を申し込んだのは言うまでもありません。
私が彼女のヴァイオリンを初めて聴いたのは、もう10年近く前になるでしょうか。当時住んでいたサンフランシスコで、彼女が出演するサンフランシスコ・フィルの演奏会のチケットが余っているからと友人が誘ってくれたのが最初でした。私は彼女の名前しか知らず、何の思い入れもなく誘われるままに聴きにいったのですが、その時のメンデルスゾーンのヴァイオリンコンチェルトには本当に感動しました。その数年後にまた、同じサンフランシスコで彼女の弾くヴェートーヴェンのバイオリンコンチェルトを聴きにいきました。この時は前回を上回る素晴らしさで、私は1楽章の間中号泣していました(笑)。ヴァイオリンの音色は人によってすごく好みが分かれるところだと思いますが、私は彼女の、非常にデリケートで心の一番深い場所にまっすぐ入ってくるような音色が大好きなのです。
今日の公開講座は、撮影禁止だったため写真はありませんが、非常に興味深いものでした。何といっても、彼女が生で誰かをレッスンするところを見られるなんて、めったにない機会です。間近で見る彼女は、本当にきゃしゃで小柄で物腰柔らかな、でも素晴らしくよく通る声の持ち主でした。
レッスンはとても興味深かったですが、残念だったのは、学生が彼女の言わんとするところをあまり理解していないように見受けられる部分があったことと、彼女の「ここはどんな感情が込められていると思いますか?」「ここはどういうフレーズですか?」「ここをどう弾きたいというイメージはありますか?」といった問いに対して、学生側からはほとんどまともな返事が返ってこなかったことです。やっぱり日本人は、「こう弾きなさい」と指示されるのには慣れていても、自ら表現する力には欠けているような気がします。これがアメリカだったら、同じ質問に対していくらでも答えが返ってくるでしょうに。
続いて行われた室内楽のコンサートも素晴らしかった。珍しいドヴォルザークの「テルツェット」、そして目が点になったのは、続くモーツァルトの弦楽四重奏曲15番で何と彼女は第2ヴァイオリンを弾いていました。世界に名だたる名奏者が、室内楽の最も目立たないパートを受け持っている所なんて、そうそう見られるものではありません。私は以前から、ソリストがオーケストラの一員として弾く時はどんな音がするんだろうという疑問を持っていたのですが(笑)、彼女はまたく出しゃばらず、完璧に第2ヴァイオリンの役をこなしていました。彼女以外は皆若手の演奏家だったようですが、さすが、素晴らしい演奏でした。最後のメンデルスゾーンの弦楽四重奏3番は、あまりに気持ち良くてほとんど眠ってしまったのが残念です(笑)。
それにしても、彼女は本当にタフな人ですね。昨日は午後3時半から8時まで、みっちり6人にレッスンをつけたそうです。今日は2人と室内楽1組にレッスンし、その後1時間以上のコンサートをこなし、今夜の最終便で関西に戻って、9日連続でコンサートだそうです。超人ですね(笑)。
これからも身体に気をつけて、素敵な音楽を奏でていただきたいものです。