札幌は数日前から雪が降り始め、気温もぐっと下がってきました。本格的な冬はもうすぐそこまで来ています。
私はころころと着ぶくれるのが好きだし、寒い日に暖かい部屋で熱いお茶を飲んでのんびりするようなシチュエーションも大好きなので、冬の到来もまた楽し・・・といったところです。でも問題は、札幌では冬に着ぶくれている人がいないことです(笑)。北海道は室内が暖かいので、みなコートの下はシャツ一枚なんですよね。昨冬は、ほとんどへそ出しのようなスタイルで地下鉄に乗っている女性さえいました。寒がりの私には考えられませんが。
そんな初冬の札幌で一昨夜、キタラへキエフ国立フィルハーモニーの演奏を聴きに行ってきました。
これが、もう、お腹いっぱい・・・というほどの盛りだくさんなオール・チャイコフスキー・プログラムで、
バイオリンコンチェルトと、ピアノコンチェルト1番のソリスト二人という豪華さ。
特に若くて可愛いアリス・沙良・オットさんのピアノコンチェルトは、きゃしゃな容姿に似合わず非常に骨太な演奏で素晴らしかったです。
でも、何より私が気に入ったのは、冒頭の「くるみ割り人形」組曲でした。
バレエ「くるみ割り人形」は、アメリカの子どもたちのクリスマスの定番です。(ヨーロッパの事情はよく分かりませんが、おそらくヨーロッパでもそうなのでは)
サンフランシスコではこの時期になると、市内のオペラハウスに正装した小さな紳士淑女が両親に手を引かれ、バレエを見るために集まってきます。オペラハウスの前にはくるみ割り人形が飾られ、バルコニーからは雪を模したシャボン玉が飛ばされ、ロビーにはあちこちに登場人物の着ぐるみが出て、子どもたちにとってそれはそれは楽しいイベントなのです(もちろん、大人も非常に楽しめます)。
キエフ・フィルの「くるみ割り人形」を聴きながら、SF時代のとある年のクリスマスを思い出しました。
当時私はホームレスの子どものためのデイケアで働いていて、クリスマス時期に彼らと一緒にくるみ割り人形を観に行きました。
その中に、タニヤという5,6歳の少女がいました。
彼女はそれはそれはお人形のように可愛らしい子で、普段はおばあさんと従姉妹たちと一緒にサンフランシスコのダウンタウンに住んでいます。
もっと小さい頃に、非常に過酷な目に遭ってきたため、とても繊細でガラスのように傷つきやすい反面、本当に人懐っこくて可愛い女の子でした。
その彼女が、なぜか私のことをとても気に入ってくれて、たまの週末にデイケアに泊りがけで遊びに来るたびに、私と遊びたがり、一緒に歌を歌いたがり、果ては私に、「チエコはとてもいいお母さんになると思うわ」と言ってくれました。
(そんなことを言ってくれたのは、後にも先にも彼女一人だけです、はい(笑))
一昨日、キエフ響のくるみ割り人形を聴いていて、なぜか彼女のことが思い出されてなりませんでした。
劇場の二階席に到着するや否や、その高さに「こわい」と言ってスタッフにしがみつき、なかなか席に座ろうとしなかったこと。
私は別の子どもの担当だったので、彼女とは席が離れていたのですが、
「チエコの隣がいい」と駄々をこねていたこと。
帰りがけ、ロビーでいきなり、着ぐるみに抱きついた彼女のピンクのワンピース姿。
・・・思い出しているうちに、ちょっと涙ぐんでしまいました。
彼女は今頃どうしてるかな。
たくさん、つらいことがあった分、これからはずっと幸せでいてほしい。
そんなことを考えながら曲を聴いていた私でした。