かつて、「心理療法」といえば、フロイトの精神分析に代表される、「クライアントが話をし、セラピストがそれを聞いて解釈を加える」というものが主流でした。しかし、いくら自分の過去の傷や現在抱えているストレスについて話し、頭では起こったことが理解できても、なかなかクライアントたちが抱えている症状は消えてゆかないことに、ある時期からセラピストたちは気づき始めたのです。
過去のことや現在のストレスをただ言葉にするだけでは限界があります。大切なのは、「今、この瞬間」に起きていることに「気づき」、今まさに起こっていることを使ったワークなのだという考えから生まれたのが、いわゆるゲシュタルトやロジャースなどの人間性心理学でした。アメリカでロン・クルツ氏によって開発されたハコミセラピーは、そうした人間性心理学とトランスパーソナル心理学の流れをくむ、最も新しいセラピーの技法のひとつです。
「ハコミ」とは、ホピ・インディアンの言葉で、
「本当のあなたは誰ですか?」
という問いかけです。
そして、この問いかけに対する答えは、すべて身体が知っているのです。ハコミセラピーでは、身体に対する気づきを多く使います。「今、この瞬間」にとどまるもっとも易しい方法は、自分が今まさに持っている身体に注意を向けることだからです。自分のからだとつながり、からだの声に耳を傾けることで、自分の中心とつながってゆき、傷ついた心も癒されてゆきます。からだは、あなたが持っている、一番素晴らしい財産なのです。