子どもはみんな、サイキック〜メアリーの話


皆様、
こんにちは。
さて、最近のポストで、子どもが癒されるためには、お母さんが癒されるのが一番という話をしましたが、

子どもを元気にするために、親ができるたったひとつのこと

これはもちろん、お父さんが子どもに対する責任を免れているというわけではありません(きっぱり)。

お母さんの生きづらさには、お父さんの浮気、暴力、お父さん自身の生きづらさ、育児を妻に任せきり、嫁姑問題・・・等々、直接・間接にお父さんが関わっているケースがほとんどだからです。

なので私のセラピーは、母親→カップルセラピーという流れをたどることも多いです。
(本当はもっとお父さんにも個人セラピーを受けにきていただきたいのですが、なかなかそこまでオープンなお父さんはおらず・・・苦笑)

今日はそんなお話のひとつを、したいと思います。

といってもこれは、私が直接担当したケースではなく、米国の大学院時代、チャイルドセラピーのクラスで先生から聞いた話です。

 

私が当時チャイルドセラピーを教わったDavid Akullianは、それはそれは素晴らしい子どものセラピストでした。

今回、この話を書こうと、久しぶりに当時のノートを読み返してみたのですが、
(日付をみると1999年・・・。あれから18年も経ったんですね・・・遠い目)
いやーもう、良いことばかり書いてあり(笑)、私のセラピーは彼からの影響を今も受けているんだなとしみじみ感じました。

 

例えば、
「その子に会ったときにどんな感情を呼び起こされるか?セラピストが感じていることは、子どもが内面で感じていることを知る手がかりになる」

「結論を急いではいけない。セラピストが体験する混乱が、セラピストにより多くの情報をもたらす。その混乱と一緒にいるように」

「子どもを語るときには、家族というコンテキストから切り離して考えることはできない。子ども、両親の双方とワークできるのが望ましい」

「親が押し込めている感情は、子どもの表現となって表れる。子どもは彼らのエネルギーを引き受け、それを行動化したり、内面化したりする」・・・等々。

本当に良い大学院で、良い先生に恵まれていたなあと思います。

 

そのデービッドが授業で話してくれた、ある女の子とそのお父さんの話です。

 

あるとき、デービッドのオフィスに、メアリーという名前の女の子がやってきました。
同行した両親によると、メアリーはハロウィーンの翌日から、夜中に叫びながら目を覚ますようになりました。
そして「誰かが家に入ってくる!」とわめき、家中のドアというドアを開けて中に誰もいないのを確かめ始めます。
ようやく家の中に誰も不審者がいないことが分かっても、その後は自分の部屋へ戻ることを拒絶し、両親のベッドの足元で寝袋に入って眠る・・・ということが毎晩、3ヶ月も続きました。

 

そして、ほとほと疲れた両親によって、メアリーはセラピーに連れてこられたのです。

 

ケースの概要をそう説明してから、デービッドは私たちに問いかけました。

「さて、ここでのテーマは何だろう?何が問題になっているんだろう?」

・・・私たちは、ない知恵を絞り、いろいろな推理をしてみました。

ハロウィーンでよほど怖い仮装の人に出会ったのではないか。

何かの身体的な病気なのではないか。脳波に何か問題があるのではないか。・・・などなど・・・・。

デービットはいいました。
「子どもの行動は、何かを家族にもたらすために起きているんだよ」

そして、このケースの場合、父親がものすごく怒りっぽくなったといいました。

毎晩毎晩メアリーに起こされ、睡眠を妨げられ、お父さんはどんどんイライラするようになる。
そしてメアリーに対して本当に腹を立てる。

デービッドは尋ねました。「お父さんを怒らせる目的は何だと思う?」

・・・一体何なんでしょう?私たちには、さっぱり訳が分かりませんでした。

 

「メアリーが毎晩、両親の足元で寝袋にくるまって眠ったということは、両親を守っているということ。
何かが侵入してきて、それから親を守っている。
何に対しての守りが必要なんだろう?そして、どうしてお父さんなんだろう?」

 

そこを疑問に感じたデービッドは、お父さんの方を向いて、何か心配事がないかどうか尋ねたそうです。

お父さん「最近、すごく落ち込んでるんです」

デービッド「どのくらい落ち込んでいますか?自分を傷つけることを考えたりしますか?」

お父さん「はい」

驚いたお母さん「なぜそれを私たちに教えてくれなかったの?」

お父さん「自分の仕事が嫌なんだ。シリコンバレーで働きたくないんだ。でも、自分で事業を始めることはできない。君たちをを経済的な苦境に陥れたくないから」

 

メアリーは、お父さんを愛していました。
だから、自分の行動によって、お父さんが抱えている怒りを表に出してあげようとしていたのです。
(鬱というのは、本来外に向けられるべき怒りが自分自身に向いてしまっている状態です)
もちろん、すべて無意識にですが。

 

この会話の後、お父さんはメアリーの方を向いて言いました。

「大丈夫だよ、メアリー。お父さんは死んだりしないから」

そこでメアリーは、部屋から出されました。
後に残った夫婦は、それからカップルセラピーを3ヶ月間続けたとのことです。

 

そして、メアリーの悪夢はどうなったでしょう?
1回目のセラピーの後、ただちに消失したそうです。

・・・さすがです。

 

デービッドは言いました。
「いいかい。もし君がセラピストとして、解決策を提示し始めれば、君は本当に起きていることを見失うことがあるんだよ」

 

うーん。言葉もありません。本当にその通り。

もしデービッドが最初のセラピーで、彼女の行動だけを問題視し、ハロウィーンがどうの、メアリーの脳波がどうの・・・といろいろ短絡的な解決策を模索し始めていれば、
問題はどんどん本質から外れていくばかりだったことでしょう。

 

デービッドは、「子どもの症状の深刻さは、その家族が抱える未解決の問題の大きさにダイレクトに比例している」と言います。

メアリーが示していた症状の深刻さは、お父さんが抱えていた鬱の深刻さと直結していました
。メアリーが問題行動を起こして家族に外部の助けを求めさせなかったら、お父さんは本当に自分の命を絶ってしまっていたかもしれません。

 

・・・・子どもってすごい(号泣)。
何てサイキック。そして本当に天使だ。

 

このメアリーの例がはっきり示すように、
親や先生が描く「子どものここが問題」というストーリーは、大抵の場合、まったく的外れであることがほとんどです。

でも、子どもというのは弱い存在なので、
強い大人が描いたストーリーのせいで問題児のレッテルを貼られ、
あげくの果てに自分の人生そのものを破壊されてしまう子の何と多いことでしょう。

ニュースを賑わす犯罪者の報道をみるたびに、私は彼らの子ども時代に思いを馳せてしまいます。

その子がどんなレッテルを貼られ、どれほど傷ついて大人になったか。
そして、そのようなレッテルを貼った大人自身もきっと、同様の子ども時代を送ったのではないか。
・・・そう考えていくと、誰も悪者にできなくなってしまう私です。

 

あ、全国のお父さんお母さん。

メアリーだけが特別なのではありませんからね。

子どもは、全員が、親の内面の状態を精確に読み取るサイキックです。

あなたのお子さんも、もちろんそうです。

そんなサイキック(=天使)が自分の一番近くにいて、常に自分たちを癒そうとしてくれていることを、どうぞ忘れないでくださいね!

 

当時のノートには、他にも面白い症例がいろいろ書いてあったので、
明日もまた、そのひとつをご紹介したいと思います。

どうぞお楽しみに。

 

今日もどうぞ良い一日を。